「ブランディングって聞いたことあるけど、何のこと?」
「どこに相談すればいいんだろう…」
アートディレクターの小林です。
突然ですがみなさん、「ブランディング」と聞いて何を想像するでしょうか。
ブランディングは自社の認知度を拡げる、商品やサービスをプロモーションする際には欠かせないものです。
必要なのはわかっているけれど、何から手を付けるべきなのかわからない…そのような企業が沢山あると思います。
私はこれまで、アートディレクターの自分の経験を元に、中小機構にて創業支援や広報課のアドバイザーを長年担当してきましたので、ブランディングで迷路に迷い込んでしまった多くの経営者の方々と面談し悩みを共有してきました。
なぜ道に迷ってしまうのか、なぜ業者に頼んでいるのに上手く行かないのか、今日はその辺りを少しお話していきたいと思います。
そもそもブランディングとは?
ブランディングとは「強力なファンづくり」
ブランディングを一言で表すと、「強力なファンづくり」です。
どうしても目先のデザイン制作物やコピーライティングのあれこれから考えはじめてしまう人が多いのですが、もっと上流から考えていく必要があります。
「ファン」は、企業の強力なサポーターです。サービスや商品のリピーターとなり、口コミも拡散してくれます。非常に大切な存在なのです。
このようにファンを作っていくことを意識すると、目の前のチラシのデザインから考えを起こしていくのは順番がちょっと変だと思いませんか?
人々にどのような企業・商品・サービスだと認識されるべきか。
理念や信条を探求し、このコアなコンセプトを見つけ出します。この軸が定まっていないと、様々な制作物がバラバラの主張となり、まとまりが無くなってしまうのです。
現代社会の競争にブランディングは必須!?
たくさんの物・サービス・情報が溢れる現代社会では、アピールの仕方を間違えてしまうとそれがどんなに良いものであっても埋もれてしまいます。
そのためブランディングはあらゆる企業にとって必須であり、現代で生き残るためには必要不可欠。商品やサービスの質の追求と同等に重要なのです。
”強力なファン”を獲得できれば、値段が高くても選んでもらえる。展開する他の製品にも興味を持ってもらえる。
みなさんも何か商品を購入する際、支持しているブランドやメーカーがあると思います。ビールを買うなら◯◯、洗剤は決まって◯◯の物を買う、カフェは◯◯が好き、など。
また、そのように愛用しているメーカーが新商品を発売すると買ってみたくなりませんか?
どうでしょう?これこそが、「ファンである」と表現できますね。
なぜ自分がその商品のファンになったのか、経緯を辿っていくとそこにはブランディングのヒントが散りばめられているはずです。
ブランディングにおける中小企業の現状・悩み
ブランディングは必要不可欠なマーケティング戦略ですが、中小企業にはなかなか浸透していないという現状があります。
なぜ中小企業はブランディングに苦しむのか、ここではその理由を確認していきましょう。
セルフブランディングで迷走
ブランディングの重要性は理解していても相談先が分からないために、「自分たちでやってしまおう!」という考えに至ってしまう企業は多いです。
確かに商品やサービスの機能性やこだわりを一番理解しているのは、開発した当事者であることは間違いありません。
しかし、一般消費者がそれをどのように受け止めるか、俯瞰して見ることが大切です。
消費者の潜在ニーズは何なのか、そこに刺さる商品やサービスの”真の魅力”を導き出し、コミュニケーションを組み立てていくのです。
「◯◯にこれだけこだわったんです!」という一方的な主張は要注意です!
そういった全体戦略を組み立て、一つ一つの施策に落とし込んでいく総合プロデューサーを担うのがアートディレクターという役割です。
ブランディングでよくある失敗
陥りやすいブランディングの失敗例をご紹介します。
その1.ターゲットが絞れない
商品やサービスの魅力を伝えるには、まず「どんな人に使ってもらいたいのか」を明確にしなくてはなりません。
しかし自分たちで生み出したものには愛着が湧くもので、セルフブランディングをしてしまうと「とにかく多くの人に知ってもらいたい!」と、ターゲットが漠然となってしまいやすいです。
ターゲットが曖昧なのは、的のないところで弓を引いているのと同じです。
どこを狙ったらいいのか定まっていないため、効果的な訴求ポイントや手法が選択できず、何をやっても思ったような反応が得られない…という事態を招きます。
その2.理想と現実のミスマッチが起きる
ブランディングに対する熱意はあっても、その理想が商品・サービスの魅力とマッチしていなければブランディングは失敗してしまいます。
一体どういうことなのか。
以前、とあるお茶屋さんのお悩みで、ブランディングを始めたが商品の販売数が一向に伸びないとご相談がありました。Webやパッケージを見てみると、どれも「紅茶」をイメージする洋風でポップな、お洒落な雰囲気。自社商品の日本茶の魅力と、デザインのミスマッチが起こっていました。
見た目のデザインにだけこだわり、購買層が誰なのか忘れてしまうとこのようなことが起こります。理想ばかりを追いかけず、常にお客様目線を意識することを忘れないでください。
その3.発注先選びのミス
ブランディング資金が潤沢でない中小企業に多いミスとして、発注先選びに失敗してしまうことが挙げられます。
今はデザイナーやクリエイターに直接発注ができ、費用も抑えられます。
デザインやコピーライティングをそれぞれ外注することもあるでしょう。
しかし、制作物の最終目的地(達成したい目標)、コンセプトがバラバラになってしまっては、「ブランド」は確立されません。
自社にマーケティング部門があり、統括できる人材がいれば良いのですが、中小企業ですとなかなかそうもいきいません。
ブランディングにはアートディレクターは必ず必要ですし、実績あるアートディレクターには優秀なクリエイターもチームとしているはずです。
もちろん、直接クリエイターに発注するよりもコストが掛かりますが、まとまりのない制作物がどんどん出来上がっていくことこそコスト高になってしまいますので、どのように全体の戦略を進めていくかはしっかり検討しましょう。
その4.情報に翻弄される
一時の感情や情報に流されてしまうのもよくあることで要注意です。
コアのコンセプトや最終目的地が決まっていない場合によく起こります。
私が見聞きした中でも、情報に翻弄されてしまいブランディングに失敗した企業はたくさんあります。
施策を進める中で頼れるパートナーがいないと、人からの噂話やアドバイスを全て真に受け、迷路に迷い込んでしまいます。
どこに向かっているのかを常に確認でき、軌道修正してくれるパートナーを見つけていくことはとても大切なことだと考えています。
かといって、業者に丸投げすることもNGです。
事業主や自社の担当社が積極的に関わないとマーケティングは成立しません。外部のパートナーに依頼する場合にも二人三脚でチームとなって試行錯誤していく、ということはぜひ意識していただけますと幸いです。
その5.既存商品の見直しができていない
ブランディングは何も新商品のリリース時に限ったことではありません。
時代が変われば人々の物事の捉え方も変化します。ロングセラー商品であっても定期的なブランディングの見直しは必要で、見せ方一つで既存商品の売上に大きく影響します。
長く愛されている商品やサービスは、「今まで愛されてきた◯◯」に囚われ過ぎてしまい、世間のニーズとのギャップが見えなくなってしまう…ということがあります。
企業の「伝統」があれば尚のことではないでしょうか。
この問題に至っても、やはり鳥瞰的に市場や自社のポジションを観察し、需要に合ったターゲット選定、訴求方法を追求することです。
ブランディングは誰に相談すればいい?
ではブランディングを検討する際は誰に相談すべきなのでしょうか。
ブランディングのことはアートディレクターに依頼。
結論からお伝えすると、ブランディングのことはその道のプロである「アートディレクター」に依頼することがベストです。
アートディレクターはブランディングの目的・ゴールまでを導く存在です。
商品の見た目だけでなく、コピーライティングからプロモーション手法、販路開拓までを一貫して戦略を組み立てていきます。
マーケティング部門が社内に無い中小企業にこそ、重要な意味を持つ存在となるでしょう。
アートディレクターがいるメリット
マーケティング、クリエイティブ制作の分野に精通していないと、一体何の相場がいくらくらいかかるかわからずに、外注先探しにも時間と手間がかかり苦労します。
各プロセスに適した人材を選別し、的確に作業指示を出すことができるのもアートディレクターがいるメリットです。
そして上がってくる制作物の質を見極めることもでき、依頼主の手元に届く前にフィルターが掛かります。結果として効率が良く、時間という資源を含めるとコストパフォーマンスのいいプロジェクト進行になるはずです。
アートディレクター・小林が手掛けてきたブランディング事例
ここでは小林がアートディレクターとして手掛けたブランディングの一例を紹介いたします。
日野市「みちくさ会」のジャム
日野市の女性農業者の会「みちくさ会」をブランディングした事例です。
日野市にある農家の奥様たちが主催する「みちくさ会」では、地元で偶然にも育った特産品ルバーブを使用した珍しいジャムを製造していました。
プロモーションが弱く、販路開拓ができずにいたところご相談をいただきました。
2年間にわたりブランディングに携わらせていただき、ご予算に合わせた営業ツールを制作しました。
- ロゴ制作
- 製品撮影
- ジャムのラベル
- 宣伝用のぼり(大小各種)
- パッケージ用の判子などに使えるハンコ
- 製品にも添える、ジャムの説明が載った小冊子
- ポスター
- ECサイトのデザイン
- イベント出店
現在では商品のラベルもリニューアルされ、見た目も流通も大きく改善。新聞にも取材掲載され話題となりました。日野市内のファーマーズセンターを中心に多くの方々に愛される商品に生まれ変わりました。
小平市「さいとう農園」
小平市の市民農園「さいとう農園」をブランディングした事例です。
主にロゴ制作と看板、名刺などのPR戦略を担当しました。
さいとう農園では進化型体験農園「みどりの風」を運営しており、こちらの農主は市民の方との交流や日々の研究の積み重ねで、常に進化していく新しい農園の形を目指しています。
ヒアリング時に呟かれた「特に近所の子どもたちに気軽に訪れてほしい」という農主の想いを汲み取り、子どもたちや親子、家族にも親しみやすい農園であること、そのイメージをロゴに表しました。
また農園のそばに掲示板を設け、そこにイベントのお知らせなどを掲載、ホワイトボードをつかって勉強会などこれから、子どもたちやご家族に訪問してもらうための施策を打っていく段階です。
ここに挙げたのはあくまで一例ですが、「依頼主が心に秘めている希望、想いをどれだけ引き出せるか」が最も重要であると考えています。
どれだけお金を掛けて営業ツールを制作しても、この理念や信条が乗っていないと長く使い続けられるものにはなりません。